第一部

第一部　さらば、青春

第一章　緋色の郵便馬車旅立つ

　アルヴィンツィ・エドゥアルドは１８３０年新教徒として生まれた、黄金拍車の勇者[１]たちの名を記したかの本には彼についてそう記されている、すなわちアルヴィンツィ・エドゥアルドはもうとっくに百歳を超えていて、幾人かのへつらい屋の食客たちのよれば百二十年も生きていることになる、というのもこれは人類の歴史上、白いカラスに劣らず稀なことだからである。

　外見から見ればアルヴィンツィはあの、テントで暮らし、草原で育ったアジアの種族の老人たちに似ていた、彼らは決して老いぼれるということがないのである。彼は鞍の上で

最後のうたた寝につく、古(いにしえ)の時代のタタールのハーンたちのように骨ばっていて、茶色

い皮膚、日焼けして、風に鍛えられ嵐によって固い皮を作られていた。テントに暮らすジ

プシーたちの間にはこんなふうに乾いて、骨ばった老人たちが見つかるものだ、彼らは決して変わらず、常に健康で、天候の苛烈さは彼らを楽しませるのである。

　そんな風にアルヴィンツィはほぼ五十年というもの変わらない姿のままだった。煙のように茶色く、草原の羊飼いのように落ち着きはらっていたのだ。

　決して急ぐことがなく、常にゆっくり慎重に食し、フロックコートの下にはズボンひもを帯び、その腕には思い切ってレスリングだってやれたであろう筋肉がついていた、自室では、人生ですでに何もかも知り尽くしてしまった人間のように、落ち着き払ってタバコをふかした、率直な物言いを好み、同じ理由で名門出の人間あるいは高貴な魂の人間だけを好んだ。

　おそらく誰一人として、アルヴィンツィの生まれた年月を知らなかった。多分常にアルヴィンツィ・エドゥアルドの人物像を取り囲んでいた謎めいた環境が、謎を増大させたのだ。

　あるいはこの裕福な、名門出の紳士～彼は自分の周りの、おはようの挨拶をしてきた人には報酬を与えることを習慣としていて、あらゆる理由であらゆる人にチップを投げるよう努めた～は、いささかの倹約を意図して誕生日の日付を秘密にしたのかも。エデの名の日[２]にはアルヴィンツィは、身を潜めている旅館を動くことも出来ず、守衛が朝から晩まで電報を運んでくるのだった。

　夕方になるとアルヴィンツィは大きな本を引き寄せた、それには知人たちと友人たちの名がいくつかの個人的観察とともに書き込まれていたが、ウィーンとブダペストの芝生の上で常に走り回っている競走馬たちについての日記もつけていた。

　この膨大な本から彼は馬たちの性向を知ることが出来ただけでなく、エデの名の日に敬意を示し幸運を祈ってくれた人々のそれをも知ることが出来た。

　アルヴィンツィ・エドゥアルドはハンガリーとオーストリアに最大の食客を養っていた。たくさんの贈り物で怠惰に慣れさせたこののらくら者たちで、彼は軍勢を組織することも出来ただろう。彼の一歩一歩には大勢の飢えた眼がつきまとい、彼に「こんにちは」を言うあらゆる機会をねらっていた怠け者の数は数百に達していたのだ。同じ理由からアルヴィンツィは、伝説によれば誕生日を自分だけで、手中のクリスタルの杯で、閉じられたドアの向こうで祝うことを習慣としていて、自分の崇拝者たちが、その手で贈り物を差し出すべき理由があったその日付を知らないことを、一人で笑っていたのである。

　アルヴィンツィが居住していたウィーンの宿では、週に何度もこの老いた男の友人たちのためのテーブルが整えられるときに牛肉のシチューとグヤーシュの匂いがした。

　彼は女たちのことは彼独特のやり方で愛した。一度とて一人の女のために常より早起きしたことはない、それどころか彼の秘密めいた冒険は、ガラスのコップのように見えすいていた。多分一人か二人の女をひいきにした、幻を本物と思い込む女優たちを、上流階級にあこがれるユダヤ女性たちを、とはいえもしオーストリアのある大公妃が微笑みかけることがあれば、喜んで財産を捧げたであろう。

　正確に言えば、多分彼が財産を捧げたりはすることはあるまい。

　数百万コロナのチップを分け与えたこの人物は、正確に金の価値を知っていた。贈り物と冷たい優雅さとで女たちを近づかせ、一人にすら愛しているとは言わなかったが、憐れな法律家のように秘かにそれを切望していたのである。特別な人生行路のもと～結局は首長の財産たる所領にありつくまでは、そしてそれだけでなく顔と表情を保つことを学ぶまでは、昔の年月をゲーム・テーブルの周りや緑色の芝生の上をとっぷりとぶらつき、冒険的な投機を実行した。その額には、偉大なるカルタ師とギャンブラーの名人芸を極めた平静が宿っており、このポーズは最後には彼本来の性向となった。笑いを忘れ、その眼は決して驚きにまたたきすることはなかった、いんぎんに幸運の後を追い、もし不運にあっても決して驚きを見せなかった。

　カード、競走馬そして金融市場、まちがいなく彼に多くの時間を費やさせたこれらは、彼の生活において、外見上は意味のない退屈しのぎで得るところのないひまつぶしとしての役割を演じていた。彼は常にカードも美しい女性も、まるで古い大貴族の邸宅の生ぬるいサロンでの退屈なパーティーの間中、老伯爵夫人たち相手にカードのゲームを戦わせているかのように慇懃無礼に無関心に扱った。

　カードに対しては冷たいあしらい方は非常に効果があったからこそ、彼は一層期待に応えようと励んだ、というのは軽蔑するように混ぜていたからである、その一方美しく甘やかされたレディたちの方はといえば（彼女らのせいで彼は危うく秘かに死ぬところだった）彼独特の礼儀正しさ、奇妙な征服、そしてふつう子供相手にとられるものである寛大な振る舞いを断固たる嫌悪とともに迎えるのだった。

　ポケットが空っぽの冒険者たちでも一番美しいバラを手にすることが可能なこの場所だけは、幸運は彼の歩みについてはこなかった。（何人かの老いて貧しくなった伯爵夫人だけが、彼のために心から祈った、彼女らはすでにアルヴィンツィ以外の誰からも親切な贈物をもらうことがなくなっていたのだ）

　アルヴィンツィはかくて長い人生において、女たちに下品で馬鹿げたおせじを言うことが出来、彼女らと踊り（彼はしばしば一人で踊った）、まるで誰かそこに現れないかといわんばかりに早朝プラーター公園で馬を駆る男たちを、地獄の微笑みを浮かべて見つめていた。もしいつかどこかの閉ざされた宮廷の窓の下で、月光のもと落ち着かない心で立ち止まっただろうとしても、彼は自分自身に対してさえこの面での弱さを認めることはなかったろう。

　同じ理由で崇拝者たちに百二十歳だと言われても、もうそれにかまわなかった、宿では「ご老体さま」と呼ばれていた、そして女たちは彼を賢人で冷静な人と思って助言を求め、恋のすったもんだを隠さず、ときには妙な質問で彼を不意打ちするのだった、「あのお若いＸあるいはＹはどんな方なのか、おっしゃっていただけませんか・・・」

とはいえ百二十歳とはいっても、時折あるチェコの伯爵夫人か劇場で見かけたある淑女のことを渇望とともに思うあまり、しばしば慣れ親しんだ旅館から、親愛なるウィーンから旅立たずにはいられなくなるのだった、そしてブダペストにやってくると、そこでは財布の開け閉めに疲れ果ててしまいかねなかった。

　以前は世界中を巡り歩いたとはいえ、ウィーンこそが彼の町だった。スコットランドの狩猟用宮殿の涼しい暖炉でもなく、フランスの海岸の首飾りのきらめきの中でもなく、パリでも、彼の領地ゼンプレーン王城県[３]でもなかった、すなわち彼はウィーンの千年の年をへた壁を、曲がりくねったリング内の通りを、ビヤホールの臭いのする小さな空間を、際立って高い、白い窓枠の家々を、そして住民の特別な社交界のエレガンスを忘れることはなかった、それはハプスブルグ家の居城がペストの百万長者の宮殿に比して高貴なように、ペストの世界に比してそれほど高貴なのだ。

　多分彼自身なぜこの、ほとんど全人生をホフブルグ（王宮）の近辺でそして大オペラのアーケードの下で、コケむしたヨーゼフ広場（王宮の一画にあり、ヨーゼフ二世の像がある）とグラーベン通り（最大の目抜き通りケルントナー通りとぶつかる歩行者天国）のショーウィンドーの前で送ってきたほどの熱狂がウィーンに結びついているのか、はっきりとはわかっていなかった。

　うららかな日中、雪がリングでちらほらしたとき、そして木々が彼らの下を散歩する女性たちのように柔らかい毛皮に包まれて輝くとき、彼はときには一体フェレンツ・ヨージェフは何をしているのか、そして憲兵は監視所で何をしているのか、巨大な像と皇帝の兵士たちの事務所のドアの前に止まっているのは誰の馬車かと、ちらりと目を走らせる異国の旅人式に王宮の門の一つをくぐるのだった。

　ラーコーツィ・フェレンツ[４]と親戚関係にあったとはいえ、彼は常にある種の敬虔な感情と共に青銅の騎士たちの傍らをゆっくり通り過ぎ、勝利の門をくぐってそっとぶらぶら去っていくのだった。ちっとも感傷的な男ではなかったとはいえ、都心のある比較的古い家の前では幻想をめぐらしながら立ち止まり、もしどれかの窓でカナリアを見かければ、一人のつつましい魂のウィーン女に気づいた、彼女は五月には白いスカートでグリンツィング(ウィーンの森の入り口付近にある村で、ホイリゲと呼ばれるワイン・レストランがたくさんある)で踊り、一方冬にはある古い金細工の店で白い手から古い宝石を売るのだ、それはかつて公爵たちが身につけたものだった。

　彼はある小説の主人公のように、ウィーン生活に楽しみを見出した・・・

　シュパッテンブライでは輝くビールを、「マイッスルとシャーデン」（ケルントナー通りにあったホテル）では骨つきの子牛肉を楽しんだ、聖シュテファン寺院の塔では、リードルでは最高のコーヒーを淹れ、ザッヒャー夫人は客たちに最高級の果物を売った。彼はペスト人たちが、すなわちいわゆるハンガリー人たちがウィーンで宿をとるのが常のホテルだけは避けた。「ブリストル」と「グランド・ホテル」（ブリストルもグランド・ホテルも国立歌劇場近くにあり、現在も営業している老舗の高級ホテル）は一度としてわれらが主人公を見かけたことはない。彼はすでにペスト人たちを非常によく知っていたし彼らの方でもそうだった。彼らはとっくにたもとを分かっていた。（アルヴィンツィは好きでない住民たちの金を競馬レースでせしめるためにたまにペストに行ったのだ）彼は昔の民謡歌手たちの子孫がその才能を披露している場所を知っていたし、つじ馬車屋たちのシルクハットが、ローテントゥルム小路（シュテファン広場の裏から、ドナウ運河にかかるマリーエン橋に通じる通り）から近づくことの出来るワイン・ハウスが好きだった、そして運河の向こうではおしゃれな娘たちが日暮れどき職場から、商店から出てくるのだ。野菜市場の麻薬的な香り、そして商店の夜の輝かしさ、女たちの靴がピカピカ光り、馬鹿げたスカートの鎖、心地よいパン屋、うららかで広い円形広場では馬車屋たちが陽気に馬を駆っていた。

　そしてハプスブルグ家の人々、ウィーン女性タイプを代表する大公妃と庶民的な大公たち、この町での彼らは世界中のどんな統治者の中にも見当たらないような人々だった、すなわち彼らは彼を憧れの念で満たしたのである、というのもこの地上で彼に強い印象を与えるのはたった一つのもの、すなわち君主だけだったからである。

　彼はゲームには一人のお針子娘にするようなやり方で別れを告げた、デートに行くのを

やめたのである。残念ながら、憧れの女性たちに対してそうは出来なかった、彼女らは決してデートに応じてくれなかったから。彼は不承不承ながら注目に値する、有名で、尊敬に値する老紳士になった、もし一人の誘惑された娘が彼ゆえにどこか郊外で毒をあおったとしたら、むしろその方が心にかなったのであろうが。彼は、口に苦い味を感じたように女たらしの男たちを軽蔑していた、とはいえもし見知らぬ女から真の恋文をもらったら、

マリアツェル（ウィーンの南西１２８キロのところにある。巡礼教会の町として有名）でミサをあげさせたことであろう。彼は、種族の若い女たちが半ば裸で身を潜めている踊りの会場のそばを、顔をこわばらせ無表情で出て行く老いたタタールのハーンになった。さらに彼は、老いた従者のアントンが、決して口笛を聞きつけることがないようにも気を配った。王宮のハプスブルグ一族とて、皇帝の居城から遠くない一軒の小さな宿泊施設で一人の黄金拍車のハンガリー紳士がかげ口、むだ口

の材料を与えまいと注意していたほど厳しくスペイン風の作法(エチケット)を守ることは出来なかったろう。

　とはいえ都心では、彼が路上でおおかた全てのチェックのスカートに注目することは誰でも知っていたのだが、ただ誰もそれを漏らさなかっただけである。

　彼は散歩しているあらゆる人々を自分の馬車から見知っていたし、もし偶然一人の太った茶色い髪の名前を聞きつければ喜んだのだった。

　ただ彼は女たちに対しては、老フェレンツ・ヨージェフに対するのと同じくらい頑固で片意地だった、フェレンツ・ヨージェフのことは、彼と友人にならなかったので怒っていた。もし彼が一度古い旅籠にやってきて彼と昼食をとれば、すぐさま状況は違ったものとなっただろう。けれどもこの時期すでにフェレンツ・ヨージェフは家族の輪にだけは通おうとはしなかったし、ヨーロッパ第一の紳士と自認していアルヴィンツィをも上回るほど傲慢な人間になっていた。

　かくて裕福なアルヴィンツィの友人たちの大部分は、何らかの理由で自分もフェレンツ・ヨージェフに対して腹を立てていたウィーンの紳士たちでいっぱいだったのである。幾分かは彼らの年齢、部分的には彼らの貧困、たまには重い税金が、彼らに対して村の空気の方がいいのではないかと提案していたのだが、彼らはウィーンの城のいわゆる外堀近辺から動こうとしなかった、というのも彼らは皇帝に立腹していて、理想化しながらも、貪欲に宮廷のニュースに耳をすませていたからである、まるでいつ彼ら自身も宮廷の出来事の登場人物になるかは、彼ら次第、彼らの同意次第であるかのように。

　このようにアルヴィンツィは赤いガリバルディ・シャツで部屋に座り、ゲームを忘れ、女を忘れて、王宮で皇帝が何をしているかと毎日たずねていた。

　（おそらくもしいくばくかの礼儀がこの堅固で気難しい男の中に巣くっていれば、フェレンツ・ヨージェフも全く同じことをしただろう）

　彼はやがて皇帝の行動を監視するようになり、評判になったニュースに頭を振りながら耳を傾けた。ある機会に、皇帝は苦しめられていたせきのせいで眠れないでいることを知った。すでに触れたように、互いに良い関係にはなかったとはいえ、アルヴィンツィはフェレンツ・ヨージェフの病気について緊急に一番高名な教授たちの意見を請うた。

　またあるとき千の口のかげ口が、風がウィーンの通りで秋の木の葉を蹴飛ばすように、ある特別なニュースをアルヴィンツィの元にころがしてよこした。

　長年フェレンツ・ヨージェフの個人的知人として挙げられていたかの女優が金銭的問題に陥った、という話についてのニュースだった。[５]

　アルヴィンツィは、友人の「皇帝にご立腹」たちが心ざわめかせてブラック・コーヒーを飲んでいる間、憤って一人で頭を振った。毎日午後になると町からさまざまなニュースが、ますます陰気になっていくアルヴィンツィのもとにもたらされた。

　「皇帝はもちろん知人を飢えさせたりなさらないが、フェレンツ・ヨージェフは、金銭にどんな価値があるのか決してご存知ない。つい最近も首長の高価な陶器の一式をかの非常に尊敬に値する淑女にプレゼントされたが、その陶器を置く台についてはご考慮なさらなかった。皇帝たちは市民の生活のささいな問題についてはご存じないのだ。オーストリア皇帝が、肉屋では勘定が溜まるのだということをどうやって知るだろう？」ウィーンの路上で宮廷の馬車を見かけると、眼に涙を浮かべるキンスキー伯爵が言った。

　宮廷の劇場の周辺で、男優と女優たちを感激とともに眺めるのが習慣の、氷のような灰色の閣下が、すでにより正確なニュースをもたらしていた。

　「たかが一万フォリントのことだそうだ。そのためあの偉大な芸術家（ヨーロッパでは女優をそう呼ぶが特に敬称ではない）の家具は競売にかけられている。もちろんこのことを皇帝に知らせるような勇気のあるものはいない。一体全体誰がそんな無粋になれるだろう？問題の親愛なる女主人は最小限のことしか口にしないらしい。こうしてあの芸術家の家具が競売にかけられるという、例のない、歴史上前代未聞のことが起きるのかもしれん」

　アルヴィンツィは、周囲で様々なニュースがかもめのようにあちこちにぶつかっている間、長々と火のついた葉巻を吹いていた。

　アルヴィンツィはスリッパの鼻を見つめ、そしてアンティークな時計の針にその眼を止めた。その場にいた老いた友人たちは、それが遠ざかるべき合図だと心得ていた。

　やがてたそがれどきアルヴィンツィはこっそりと古い宿泊施設を離れた。アルヴィンツィを一番良く知っていたキンスキー伯は、習慣通り宿泊施設の周りをぶらついていた。そしてある引退した宮廷士官にこう話した。

　「エドゥアルドのポケットには一万フォリントある。そしてやつはそれを、金銭上の危機から助け出すためＳ．カタリンに持って行くのさ」

　彼らはこの件についてそれきり話さなかったが、それでも何日かして皇帝がアルヴィンツィ・エドゥアルドを警察当局によって、好もしからぬ外国人にはお決まりだったように、ウィーンから追放したという情報に驚く者はウィーンには一人もいなかった。

　「緋色の郵便馬車に馬をつないでくれ」アルヴィンツィ・エドゥアルドは古いホテルで、手配した、そして人生でいつもそうだったように落ち着いていた。彼は習慣通り道をハンガリーへととった、汽車は商人と仲買人たちの使うものだからである。

　「さようなら、わが恋、ウィーンよ、近寄りがたい大公妃たちと愛しいわが青春よ」アルヴィンツィは言った、一筋のかすかな灰色のすじがそのひげの中に見えた、それ以前はそこになかったものだった。

　カレンダーは聖ゲノフェーファの日（パリの守護聖女、聖ジュヌヴィエーブの日、一月三日）の日を示していた、そしてその年は厳しい冬だった。