深瀬基寛（1895-1966）

　英文学者深瀬基寛は、T・S・エリオットやCｈ・ドウソン、ウェイドレやウォーコップをわが国に翻訳紹介するだけでなく、『現代英文学の課題』や『エリオットの詩学』、『共通感覚』といった優れた評論の数々を書き残した思想家でもありました。本を読むということと書くということは本来別のことではなく、優れた外国の思想家を読みこみ、翻訳・紹介することと、自らの思想を練り上げることもまた同じであるということを身をもって示すことのできた数少ない思想家の一人であるといえるでしょう。深瀬基寛の思想に対する「目利き」ぶりは驚くべきもので、ウェイドレ、ウォーコップなどは深瀬基寛の翻訳がなかったらわが国に紹介されたかどうかも怪しいくらいです。また、彼自身の書いた『エリオットの詩学』は単なるエリオットの紹介にとどまらず、「聴覚的想像力」や「感性の論理」、「伝統」といった重要な問題をめぐる思索が展開されてもいる名著です。

【年譜】

明治28年　１０月１２日　高知県生まれ。
大正２年　第三高等学校入学
大正５年　同校卒業
大正５年　東京帝国大学文科大学入学
大正８年　同大学卒業、市立東山中学校講師嘱託
大正９年　京都帝国大学大学院入学
大正11年　松江高等学校教授
大正14年　第三高等学校講師嘱託
昭和２年　第三高等学校教授
昭和７年　京都大学文学部講師依嘱
昭和24年　京都大学教授に補し吉田分校勤務を命ぜらる。
昭和33年　京都大学退官、南山大学教授
昭和41年　南山大学退職
昭和41年　８月２１日逝去。享年七十

*深瀬基寛集２巻(中央公論社昭和４３年刊）による。

深瀬基寛著訳書一覧
深瀬基寛「コンニャク問答」
深瀬基寛「政治と文化から宗教へ」
深瀬基寛『エリオットの詩学』抄１
深瀬基寛『エリオットの詩学』抄２
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